2023年10月16日 月曜日
9月30日(土)、10月1日(日)、10月7日(土)の3日間にわたる日程で、東京大学の研究者に学ぶ講座「超小型人工衛星開発講座」を開催しました。東京大学中須賀研究室から4名の方に来所していただき、直接指導していただきました。県内の高校生23名(7校)が参加し、人工衛星開発の第一歩である「缶サット」の製作に取り組みました。
1日目
中須賀教授から「超小型人工衛星と缶サット」について講義していただきました。中須賀教授は、具体的な事例を挙げながら、宇宙開発の大切さ、超小型人工衛星開発の意義についてわかりやすくお話しくださいました。また、開発の過程で起きる様々な問題に対してどのように解決していくのかということや、マネジメントしていく上で重要とされているコスト、時間、人員、リスクについてお話しくださいました。この講義は、聴取希望があった県内小学生にオンライン配信も行いました。続いて、講師の瀬戸さんより、今回作る缶サットの「ミッション」を発表していただきました。ミッションは、
①落下時間を8秒以上13秒以内にすること
②親機の缶サットと子機の缶サットを落下中に分離させること
③親機に搭載したカメラで、分離した子機をできるだけ長い時間撮影すること
④着陸の際に、親機にセットした6本の素麺の折れる本数をできるだけ少なくして軟着陸すること
の4つでした。 今回は4人または5人1組のチームを組み、5チームでミッション達成度を競いました。チームごとにどのような缶サットを作るかを協議したうえで、講師の方々との相談会でアドバイスをもらい、缶サットの製作に臨みました。受講生は2つの缶サットの結合方法や分離方法を考えたり、軟着陸するための機構を考えたりしました。金具、針金、スチロールブロック、金属プレート、粘土など様々な材料を使ってミッション達成に向けた缶サットの製作に取り組みました。どの班も役割分担を行い、一人一人が責任を持って作業を行っていました。また、この日は昼休み時間にランチミーティングが行われ、昼食を食べながら講師の先生方と交流し、宇宙に関する興味深い話や大学生活の話など、親しげに会話を交わす様子がうかがわれました。
2日目
1日目に引き続き、缶サットの製作を行いました。
試作の缶サットが完成したチームは、グラウンドに出て缶サットをドローンに積んで上空50mから落下させるテストフライトを行いました。テストフライトでは、親機と子機が分離しなかったり、子機をうまく撮影できなかったり、軟着陸の度合いを測るための素麺がすべて折れてしまったりと、机上の計算や室内での実験ではわからなかった課題が次々と見つかりました。そのたびに受講生は、試行錯誤を重ね、ミッションを達成するために、時間ギリギリまで課題解決に向けて一生懸命改良に取り組んでいました。天候にも恵まれ、何度もグラウンドでのテストフライトを行うことができ、見つかった課題を修正するプロセスを繰り返して完成度を高めていきました。午後には模擬フライトコンテストを行い、ミッションの達成度に応じた各チームの点数が発表され、どのチームも最終日に行われるフライトコンテスト本番に向けての士気を高めていました。
3日目
3日目は、これまでの成果を競う、フライトコンテストを行いました。
決められた4つのミッションの達成度を点数化し、2回のフライトで得点を競いました。受講生たちは、コンテストの直前まで微調整やテストフライトを繰り返していました。コンテストでは、軟着陸のためにスポンジと綿を組み合わせた衝撃吸収材とゴムの弾性を利用した衝撃吸収機構を組み合わせたチームや、子機撮影のために親機と子機の位置関係を他のチームと逆に設定したチームがあるなど、各チームの創意工夫が随所に見られました。コンテスト終了後には、講師の瀬戸さんより、缶サットフライトに関する理論解説が行われました。物理法則に関する数式を用いて軟着陸に必要なポイントが解説され、受講生たちは真剣に聞き入っていました。その後、Googleスライドを使って成果発表会を行いました。まず、フライトコンテスト1位獲得のための手法に関する仮説を発表し、その仮説に基づいた実験(テストフライト)とその結果および考察、次に向けての修正点をまとめたものを発表しました。最後にフライトコンテスト本番を終えての考察を発表しました。
講座の最後に、中須賀教授から3日間の講座は楽しかったかと尋ねれられた際、受講生全員が楽しかったと答えていました。
参加した受講生からは、「最初は、難しそうだなと思ったけれどグループワークで一人一人の考えを共有することで一つのよい缶サットができ、より良いものになった。宇宙について興味を持つきっかけとなった。」「今回の研修は、科学の本質、進路を決める上でとても良い経験になりました。」「とても楽しい時間を過ごすことができた。特に、自分や他人のアイデアを共有し合い、それに対し意見を交換する、そしてそのアイデアを実現するという過程がとても楽しかったです。」などの感想が得られました。
東京大学大学院の教授で、超小型人工衛星の分野を切り拓いた先駆者である中須賀真一教授やその研究室の学生と関わることで、受講生は、研究に対する姿勢や考え方を学ぶことができました。また、宇宙開発への興味関心を高めることができました。教育総合研究所サイエンスラボでは、高校生の缶サット全国大会である「缶サット甲子園」を目指し、缶サット High School 「缶サット電子系講座」「缶サット構造系講座」「ふくい缶サットグランプリ」も開催しています。高校生のみなさんの参加をお待ちしています。