2025年12月23日 火曜日 実験講座
令和7年12月14日(日)9:00~16:30 於:福井県教育総合研究所 サイエンスラボ
第1回わくわく!アドバンス実験講座を行いました。この講座は、理科についてもっと深く学びたい、または実験がしたいと考えている高校生の皆さんを対象とし、科学的な思考力と実験技能の向上を目的としているものです。今回は、福井県内から7校、36名の高校生が物理・化学・生物の各講座に分かれて実験を行いました。
【物理講座】力学運動の解析
スマートカート(位置、速度、加速度、力、角速度のそれぞれのデータを取得するセンサーを内蔵した台車)と高精度力センサーを用いて各種力学実験を行い、運動の様子を解析しました。
[実験1]等速直線運動における位置、速度、加速度データのグラフ化
スマートカートを等速直線運動させ、取得したデータの無線出力方法、およびスプレッドシートでのグラフ作成方法を学びました。
[実験2]引き合うまたは押し合う2物体間の2力のグラフ化
視認できない力の値の時間変化を力センサーを用いてグラフ化し、作用反作用の法則のとおりに力の値が変化することを確認しました。
[実験3]アトウッドの装置を用いた張力の変化の確認
アトウッドの装置において力センサーを用い、張力の値が物体の運動状態により様々に変化することを学びました。
[実験4]振り子の張力の解析
力センサーを用いた振り子の張力測定でスプレッドシートを用いてデータ分析し、向心力が速さの2乗に比例するという結果を得ました。
[実験5]橋脚にかかる力の解析
さまざまな運動状態の台車を橋げた上で走行させ、橋脚にかかる力の変化の様子や物体系全体にかかる力の変化の様子を解析しました。
[実験6]渦電流ブレーキが発生する運動の解析
渦電流ブレーキが発生する運動で得られた各種データを解析して、速度に比例する抵抗力を受けて終端速度に達することを確認しました。
生徒の感想
「授業で公式でしか学ばなかったことを、実際に実験して、数字を見て、グラフを見て判断するなど、解析をとおして今まで習った公式の意味を理解することができた。本当に意味のある時間だった。」
「今まであまり具体的にデータを活用した物理をしたことがなかったので、今日のような実験講座を通して経験できてとても良かった。」
「物理で習ったことを目でわかる形ではっきりと捉えられて面白かったです。数式だけでなく、実験を通して結果が分かって、物理にもっと興味がわいてきました。」
【化学講座】EDTAを用いた金属イオンの定量
多くの金属イオンと強く結合するエチレンジアミン四酢酸(以下EDTA)を用いて金属イオンの定量を行いました。
[実験1]EDTA溶液の調製および濃度決定
まず、EDTAの性質や滴定に関する原理について講義形式で勉強しました。
原理を理解したら、いよいよ実験開始です。試薬の調製に使うメスフラスコを手にした瞬間、教科書でしか見たことのない器具を扱う緊張感が走ります。ホールピペットで液を吸い上げる手が、わずかに震える参加者も。終点で赤から青への変化を目にしたとき、思わず声をあげる生徒もいました。

[実験2]市販硬水の硬度測定
次は市販の硬水に挑戦。ドラッグストアで見かけるあの硬水には、カルシウムやマグネシウムがどれくらい含まれているのか?EDTA滴定で総硬度を算出し、ラベルの成分表と自分たちの結果を比較しました。

[実験3]牛乳と低脂肪乳に含まれるカルシウムイオンの定量
カルシウム不足は、骨粗しょう症や足のけいれんのリスクを高めることを学んだあと、牛乳と低脂肪乳に含まれるカルシウムイオンの量の違いを探ります。タンパク質を沈殿させるため、酸性溶液を少しずつ加え、pHを確認しながら『沈殿が生じるその瞬間』を待ちます。真っ白だった牛乳と低脂肪乳が、ろ過後に透明な液体に変わるのは驚きです。ろ液を水で薄めて滴定をすすめると、終点を過ぎて色が一度戻る『逆戻り現象』が発生したグループもあり、実験室にざわめきが広がりました。
結果は――牛乳と低脂肪では、カルシウム量に違いがあることが判明。
なぜ違いが生じたのか?調べてみると面白い発見がありますよ!!

生徒の感想
「今回の講座では、大学で習うようなことをさせていただき、とても勉強になりました。まだ高校1年生の私にはちょっと理解が難しかったです。でもEDTA濃度の計算や硬度の計算は少しできるようになりました。まだ理解できていないところは自分で調べて考えたり、学校の先生に聞いてみたりして理解したいです。今後の化学の授業でもっと知識を身につけていけたらいいなと思います。今回は良い体験をさせていただきありがとうございました。」
「実際に手順に則って実験を行い、そこから計算で濃度を導き出すのは、とてもいい経験になりました。初めは実験操作が難しくて手間取りましたが、やっていくうちに器具の使い方や滴定に慣れることができました。協力して実験を進めていくのも楽しかったです。計算では、ただ単に公式に当てはめるだけではなく、考え方や他の課題でも使えるテクニックを学べて良かったです。今回の講座を通して、自分の手で実験する楽しさや考察する面白さを実感できました。化学への興味が増したので、これからもっと深く学んでいきたいです。」
【生物講座】スルメイカとニワトリ心臓の解剖
[実験1]頭足類のことを知ろう
午前中の講義で、イカやタコなどの頭足類について学びました。頭足類は「頭から足が生える」という独特な体の構造を持ち、歯舌や外套膜、排水を行う「ろうと」など、軟体動物に特有なヒトとは異なる特徴があることを学びました。解剖では、雌雄の判別方法や循環系・消化系の確認、脳や眼の神経節の観察を行いました。特に、イカの脳を食道が貫通していて脳がドーナツ状になっていることを初めて知りました。
[実験2]ニワトリの心臓で探究しよう
午後はニワトリの心臓を解剖しました。まず大動脈と肺動脈を確認し、右心室と左心室の心筋の厚さの違いを観察しました。次に、ヒトの心臓弁について学んだ後、ニワトリの4か所の心臓弁を探し出して観察しました。その結果、右房室弁が薄い筋肉でできていることや、左房室弁が三尖弁であることなど、ヒトとは異なる構造を直接目で見て確認できました。また、大動脈弁や肺動脈弁がヒトと同じ半月状の弁で構成されており、立体的な構造まで考察することができました。これらの観察方法や、ヒトと同じ構造・異なる構造について班ごとにまとめて発表しました。
生徒の感想
「学校で解剖をする機会は中々ないので、今日一日でたくさん解剖することができてよかったです。実際にスルメイカの内臓など体の作りを目にして感動しました。また、ニワトリの心臓の構造を観察して、予想とは違う結果になったり結果から考察したりできたのはまさしく探究活動で、とても良い経験になりました。」
「イカを丸々1杯も解剖することはほとんどないので、とても貴重な経験になりました。ニワトリの心臓は左心房から左心室や右心房から右心室への弁はあまり分からなかったけど、大動脈弁は綺麗に見えて嬉しかったです。またこういう機会があったら参加したいです。」