2025年10月21日 火曜日
10月19日(日)に、京都大学の研究者と学ぶ「iPS細胞の研究」を開催しました。京都大学iPS細胞研究所(CiRA)から2名の講師が来所し、直接指導していただきました。県内の高校生37名(8校)が参加し、iPS細胞の観察や再生医療に関する課題解決に向けての演習に取り組みました。プログラムは次の5つに分けて実施しました。
①基礎知識を学ぼう ~iPS細胞研究がわかる「幹細胞すごろく」~
研究者の生活と細胞の成長過程を元にしたすごろくゲームをとおし、グループのアイスブレイクと幹細胞に関する基礎知識の学習を併せて行いました。ゲームの中では研究者ならではの出来事が起きたり、専門用語が出てきたりするので、楽しみながら研究者の生活の様子を知ることができました。さらに、すべての細胞は内胚葉、外胚葉、中胚葉から様々な器官の細胞に分化していくことなどの基礎知識を学ぶこともできました。参加した生徒は、「多能性誘導因子」「プルリポテント」など、初めて聞く言葉の意味やはたらきについて質問していました。
②細胞の観察や実験で生命科学研究の魅力を感じる!~ブタの腎臓の解剖実験~
腎臓の構造やはたらきについて学ぶ観察実験を行いました。最初に、腎臓の構造やしくみ、はたらきを講義で学び、いよいよ1人1個の豚の腎臓を解剖しました。ブタの腎臓は腎被膜に覆われていましたが、講師の荒岡先生から治療用のiPS細胞はこの被膜の内側に移植することを教えていただきました。腎臓の観察では、この被膜や脂肪を取り除き、腎動脈や輸尿管を確認しました。その後、薄めた墨滴をマイクロチューブとプラピペットを組み合わせた器具で腎動脈に注入しました。なかなか難しく、漏れ出てしまい腎臓が真っ黒になってしまう生徒もいましたが、何とか注入に成功していました。その後、切り開いて内部の様子を観察しました。腎うの穴から閉じたピンセットを差し込むと、外側の輸尿管に貫通しており、つながりを確認できて歓声が上がっていました。また墨滴で染まった腎皮質からプレパラートを作成し、顕微鏡で観察すると、丸い糸球体や、糸球体につながる毛細血管が観察できました。
③細胞を観察しよう ~ヒト iPS 細胞などを観察する~
講師の三澤さんが用意した標本化された4つの細胞(ヒトiPS細胞、ヒトiPS細胞由来の神経細胞、ヒトiPS細胞由来の心臓の細胞、ヒトiPS細胞由来の肝臓の細胞)をタブレット付き顕微鏡や光学顕微鏡で観察しました。細胞の様子や形、大きさなどから、どの標本がなんの細胞なのかを理由を付けて推察していきました。すべて正解したのはわずか1グループでしたが、注意深く観察することの大切さや、iPS細胞の特徴を知ることができました。
④最先端を知ろう ~iPS細胞の研究者によるミニ講義~
生きたiPS細胞をサイエンスラボにある蛍光顕微鏡を用いて観察しながら、講師の荒岡先生が現在行っている腎臓の研究について講義を聴きました。また、iPS細胞から作られた腎臓のオルガノイドと呼ばれる立体構造を持つ細胞の集まりを見せていただきました。直径は約1500μmで、約100万個の細胞から構成されていることや、表面には細尿管が形成されているが内部には糸球体が形成されていること、またこれらの細胞分化が自動的に起こっていることなど、興味深い話をしていただきました。講義の後には活発な質問が自発的に行われていました。
⑤未来の医療の作り方を考えて話し合おう!
iPS 細胞やES細胞を応用した新しい医療や、最新技術を用いた新たなサービスの開発が進んでいます。こうしたなか、幹細胞の研究や応用はどうあるべきかをグループで考えました。①どのような課題があるのか?②どうすれば解決できるのか?③解決するとはどういう状況か?という課題に挑戦しました。ホワイトボードと付箋を使い、生徒たちがそれぞれ課題に取り組みました。課題をとおして、医療技術を普及させるために解決しなければならない問題と、その問題との向き合い方について学ぶことができました。
<生徒たちの声>
「豚の腎臓の解剖で表面に黒い斑点が出てきたときに、初めて腎臓の構造について理解できたような感覚になりとてもおもしろいと思いました。今回の講座の中で、研究者という職業にも興味を持ったので、これからは生物に関して気になったことや不思議に思ったことを自分から調べてみたいと思います。」
「iPS細胞についての知識はあまりなく、単に興味があって参加したのですが、想像以上に可能性を多く秘めたもので驚きました。臓器を作るということだけではなく、病気の治療法まで探っていけるというのが医療において多大な活躍、進歩を生み出しているのだと知りました。今後の展開に注目したいと思います。」
「iPS細胞に関する研究の現状や課題点などが知れて良かったです。iPS細胞には革新的な部分もあるが倫理性などのいろんな側面からの問題も存在していて、これからの将来におけるiPS細胞のあり方などまだまだ難しい問題があってとても興味深いと思いました。」