2024年10月10日 木曜日
9月28日(土)、9月29日(日)、10月5日(土)の3日間にわたる日程で、東京大学の研究者に学ぶ講座「超小型人工衛星開発講座」を開催しました。東京大学中須賀研究室から4名の方に来所していただき、直接指導していただきました。県内の高校生35名(7校)が参加し、人工衛星開発の第一歩である「缶サット」の製作に取り組みました。
1日目
中須賀教授から「超小型人工衛星と缶サット」について講義していただきました。中須賀教授は、具体的な事例を挙げながら、宇宙開発の大切さ、超小型人工衛星開発の意義についてわかりやすくお話しくださいました。また、開発プロジェクトを管理していく上で重要とされる、コスト、時間、人員、リスクの観点についてもお話しくださいました。この講義は、聴講希望があった県内小学生にオンライン配信も行いました。
続いて、講師の望月さんより、今回作る缶サットの「ミッション」を発表していただきました。ミッションは、
①落下時間を9秒以上12秒以内にすること
②シャボン玉噴出構造を設計して缶サットに組み込み、缶サットに搭載したカメラで、噴出されたシャボン玉をでき
るだけ多く撮影すること
③着陸の際に、直立姿勢で着地すること
の3つでした。 5人1組のチームを組み、7チームでミッション達成度を競いました。チームごとにどのような缶サットを作るか協議したうえで、講師の方々からアドバイスをもらい、缶サットの製作に臨みました。受講生はシャボン玉噴出の方法を考えたり、直立姿勢で着陸するための構造を考えたりしました。金具、針金、スチロールブロック、網状ネット、発泡スチロール球、粘土など様々な材料を使ってミッション達成に向けた缶サットの製作に取り組みました。班のメンバーは違う高校からの受講生が集まっているため、製作作業をとおして交流を深めることもできました。試作の缶サットが完成したチームはグラウンドに出て、缶サットをドローンに積んで上空50mから落下させるテストフライトを行いました。
また、この日は昼休み時間にランチミーティングが行われ、昼食を食べながら講師の先生方と交流し、宇宙に関する興味深い話や大学生活の話などで大いに盛り上がりました。
2日目
1日目に引き続き、缶サットの製作およびテストフライトを行いました。テストフライトでは、シャボン玉がうまく噴出しなかったり、直立姿勢で着地できなかったりと、机上の計算や室内での実験ではわからなかった課題が次々と見つかりました。そのたびに受講生は試行錯誤を重ね、ミッションを達成するために、時間ギリギリまで課題解決に向けてトライアンドエラーを繰り返しました。天候にも恵まれ、何度もグラウンドでのテストフライトを行うことができ、見つかった課題を修正するプロセスを繰り返して完成度を高めていきました。午後にはフライトコンテスト1回目を行い、ミッションの達成度に応じた各チームの点数が発表され、どのチームも最終日に行われるフライトコンテスト2回目に向けての士気を高めました。
3日目
3日目は、フライトコンテスト2回目および成果発表会を行いました。受講生たちは、最終的な機体調整やテストフライトを行い、コンテストに臨みました。コンテストでは、シャボン玉噴出機構とカメラの位置関係を他のチームと違う位置に設定したチームや、シャボン玉を割れにくくするためにシャボン玉液に食器用洗剤や洗濯糊などを混ぜたチーム、直立姿勢着陸のために半球状の構造を缶サット下部に取り付けたチームがあるなど、各チームの創意工夫が随所に見られました。コンテスト終了後には、講師の望月さんより、缶サットフライトに関する理論解説が行われました。物理法則に関する数式を用いてポイントが解説され、受講生たちは真剣に聞き入っていました。その後、成果発表会を行いました。まず、フライトコンテスト1位獲得のための手法に関する仮説を発表し、次に、その仮説に基づいた実験(テストフライト)とその結果および考察、次に向けての修正点をまとめたものを発表しました。最後にフライトコンテスト本番を終えての考察を発表しました。
講座の最後に、講師の方から3日間の講座は楽しかったかと尋ねれられた際、受講生全員が楽しかったと答えていました。
参加した受講生からは、「学校の座学中心の授業とは異なり、実際に工具類を使って缶サットやそれを構成する部品を製作したり、仮説を立てて製作したものがうまく機能するか実験を繰り返したりする体験はとても面白く、3日間の休日を有意義なものにすることができました。」「構造を少し変えるだけで着地の仕方や落ちるスピード、時間などが変わり、とても調整が難しかったです。試行錯誤を繰り返し、いろいろなことが学べました。」「他の高校の人たちと一つのものを使っていくのがとても楽しかったです。」などの感想が得られました。
東京大学大学院の教授で、超小型人工衛星の分野を切り拓いた先駆者である中須賀真一教授やその研究室の学生と関わることで、受講生は、研究に対する姿勢や考え方を学ぶことができました。また、宇宙開発への興味関心を高めることができました。教育総合研究所サイエンスラボでは、高校生の缶サット全国大会である「缶サット甲子園」を目指し、缶サット High School 「缶サット電子系講座」「缶サット構造系講座」「ふくい缶サットグランプリ」も開催しています。高校生のみなさんの参加をお待ちしています。